ひととなり(Vol.4):手話を通じてつながる心
今回のひととなりは、松川町で仕事をしながら子どもや大人達に手話を教えている、大澤 翔さん(33歳)をご紹介いたします。
大澤さんは聴力に障がいがあり、手話と筆談、読唇術(相手の口の動きを読み取る)でコミュニケーションをとっていらっしゃいます。
大澤さんのお話を聞きし、耳の聞こえない人、聞こえにくい人へ配慮していただくきっかけになると嬉しく思います。
大澤 翔(おおさわ しょう)さん
大澤さんは、現在、町内でクッキーを焼くお仕事をされていらっしゃいます。
また、毎週、水曜日は飯田手話サークルに参加し、木曜日に飯田市内で手話を教える活動を行っていらっしゃいます。
仕事だけでなく、誰もが暮らしやすい社会の実現に向け活動をされている大澤さんに、活動を始めたきっかけやどんな思いで活動されているかをお聞きしました。
町の人に耳の聞こえない人のことを知ってもらいたい
「I Love you」の意味の手話。
私が手話を教える活動を始めたきっかけは、町の人に耳の聞こえない人のことを知ってもらいたいと思ったことです。
現在、手話で話すことができる人が少なく、手話でコミュニケーションをとるのが難しい状況にあります。この現状を少しでも変えるために手話を教える活動を通じて、手話のことや私達のことを知ってもらおうと思いました。
東京や大阪などの都会では、手話が出来る人や手話を学んでいる人がたくさんいて、イベントや交流会、講演会、喫茶店などで集まって手話でおしゃべりする場があります。
しかし、残念ながら松川町ではまだそういった場がありません。いつかそういった場が松川町に限らず出来て、手話で多くの人と交流を深めることが出来たらいいなと思っています。
また、都会では耳が不自由でも安心して働ける場が多くありますが、長野県内ではまだ少なく、仕事に就けず困っている人もいます。災害があった際は、耳が聞こえないと耳が聞こえる人以上に情報がすぐに入ってこないので、大変な思いをします。
耳が聞こえず、こういった悩みを抱えている人はたくさんいると思います。耳が聞こえない人たちが抱える悩みの解決に向けて、私は、私の出来ることを焦らず、少しずつでもいいからやってみようと思い、手話を教える活動を始めました。
活動は、昨年から手話奉仕員養成講座の講師として毎週木曜日に、飯田市の社会福祉協議会主催の手話講座で行っています。
また、飯田市の公民館が主催する、長期休み中の子ど達を地域の大人たちが見守る寺子屋事業の中でも、子ども達に手話を教えました。
これからもこの活動を続けていきたいと思っています。
手話で話し合える喜び
手話を教えていて嬉しかったことがあります。手話を教わった子どもが、「手話を覚えられて楽しかった」と言ってくれました。
また、手話で「あなたと仲良くなりたい」と伝えてくれる子もいて、とても嬉しかったです。 手話で話しかけてもらうと、言葉だけでなく心もつながる感覚があり、「私も頑張ろう」という思いが湧き、胸が熱くなります。
支えてくれる人がいるから 頑張れる
友人の中島拓也さん(ひととなりVol.2で紹介)に日頃の感謝の気持ちを込め、手話で「ありがとう」と伝える。
耳が聞こえない人は多くのことで困っています。そして、音のない世界で頑張って生活しています。私は、このことを少しでも多くの人に気づいてもらい、私たちのことを知ってもらいたいです。
もし耳が聞こえず困っている人を見かけたら、筆談や困っている人の肩を軽くたたいてあげて助けてくださると嬉しく思います。
話は変わりますが、今回、インタビューを受けることを友人の中島拓也さん(ひととなり:Vol.2で紹介)に相談したところ、快く当日のサポートを申し出てくださいました。 中島さんは、インタビューを受けるきっかけを作ってくださっただけでなく、子どもの頃から仲良くしてくださり、これまで温かい支援の手を差し伸べてきてくださり、心から感謝しております。
中島さんのように私達を支えてくださる方がいらしゃるから、私達は頑張れますし、支えてくださる方との出会いをとても大切にしています。
松川町の中で、耳が聞こえずに困っている人を助けてくれる人が増えてゆき、助け合いの輪が広がっていって欲しいと願っています。
おわりに
手話で話せる人が少ないことで、コミュニケーションをとるのが難しい現状を変えていこいうと、自ら率先して手話を教える活動をしている大澤さんのお話を伺いました。
聴覚はもちろん、聴覚以外にも障がいを持つ方への理解が深まり、寄り添い支え合える人の輪が広がって行けば、誰もがより暮らしやすい町や社会になっていくと思います。
私達のちょっとした行動が、明日の誰かの笑顔につながります。
この記事が私たちにできることは何か、考え、行動するきっかになれば幸いです。
更新日:2020年09月17日